広報誌「さいたま」2022年5月 No.266より
サツマイモ基腐病は2018年に日本国内で初めて確認され、2021年には関東でも発病が確認されました。
サツマイモ基腐病は株元が黒変し(図1参照)、病気が進行すると地上部の葉は枯れ、さつまいものなり首部分から腐敗します。
まん延を防ぐポイントは「持ち込まない・増やさない」の2点です。
まだ発病が確認されていないほ場では、病原菌を持ち込まないこと、発病が確認されたほ場では病原菌を増やさないことが重要です。
図1 株元黒変の様子
苗は、基腐病に登録のある農薬(表1参照)で苗消毒を行いましょう。
薬剤名 | 希釈倍数 | 使用時期 | 使用方法 | 使用回数 | FRACコード |
---|---|---|---|---|---|
ベンレート水和剤 | 500~ 1000倍 |
植付前 | 30分間苗基部浸漬 | 1回 | 1 |
ベンレートT水和剤20 | 200倍 | 植付前 | 30分間さし苗基部浸漬 | 1回 | M03、1 |
前年に基腐病が発病したほ場の利用は避けましょう。
基腐病菌は水によって株から株へ広がる病気のため、排水性の悪いほ場の利用は避けましょう。
定期的にほ場を観察し、発病株があった場合、速やかにほ場外に持ち出して適切に処分しましょう。
発生株除去後、周辺株への感染を予防するために、表2を参照して薬剤散布を行いましょう。
発生ほ場で利用した農機具や資材は、消毒や洗浄を十分に行いましょう。
薬剤名 | 希釈倍数 | 使用時期 | 使用方法 | 使用回数 | FRAC コード |
効果 |
---|---|---|---|---|---|---|
Zボルドー | 500倍 | ― | 散布 | ― | M01 | 予防 |
ジーファイン水和剤 | 1000倍 | 収穫前日まで | 散布 | ― | NC、 M01 |
治療 |
アミスター20フロアブル | 2000倍 | 収穫14日前まで | 散布 | 3回以内 | 11 | 治療 |
疑わしい症状を確認した場合は、JAさいたまやさいたま農林振興センターにご連絡ください。
広報誌「さいたま」2022年4月 No.265より
まもなく田植えの季節を迎えます。ここでは、田植え前の作業のポイントについて紹介します。
耕起は、根域を拡大しイネの活力を高めるため、作土深15cmを目標に行いましょう。また、水稲除草剤をしっかり効かせるには、除草剤処理後3~4日間は3~5cm程度の水深を保ち、土壌表面に薬剤の処理層を形成させることが必要です。そのためには田面を均平にし、漏水を防ぐほ場作りを心がけてください。
種子は、必ず温湯または種子消毒剤により消毒してください。温湯消毒は60℃の温湯に10分間浸漬します。種子消毒剤には化学合成農薬と微生物農薬があり、どちらも有効成分を十分に種籾に付着させることが安定した効果を得るポイントです。なお、種子消毒剤による消毒では廃液の河川等への流出には十分注意し、適切に廃棄してください。
浸種の水温は10~15℃程度とし、積算水温 100℃~120℃を目安に(水温10℃の場合で10~12日間、15℃では7~8日間)種子を十分に吸水させます。
ハウス内の育苗では昼間30℃以上、夜間は10℃以下にならいよう換気と保温に努めてください。
育苗中の水管理は、根張りを良くするため、水はひかえめに、乾かしぎみに管理します。かん水は午前中に床土全体に水がしみわたるようたっぷりとします。夕方のかん水は地温を下げ、根の張りを悪くするので避けましょう。
苗立枯病は、異なる数種類の病原菌が原因で発生し、いずれの病原菌も土壌中や被害植物の残渣中で生存します。このため、育苗箱はよく洗浄し、資材消毒剤のイチバンなどで消毒します。また、育苗中の温度や湿度の急激な変化は苗立枯病や生育障害の発生を助長するので、温湿度の管理に注意してください。
管内では近年、いもち病による減収が認められます。いもち病の伝染源は、感染苗の持ち込みや前作の被害残渣(稲わら・籾殻)です。昨年、いもち病が発生した地域ではいもち剤の入った育苗箱施薬剤を施用してください。また、補植用の余り苗は葉いもちの発生源となるので補植後直ちに除去・処分してください。
縞葉枯病は、ヒメトビウンカが媒介するウイルス病です。本病に感染すると株が枯死したり、穂の出すくみや不稔により減収します。本病に感染しやすい「コシヒカリ」や「キヌヒカリ」などでは、ヒメトビウンカに有効な育苗箱施薬剤を施用しましょう。
葉いもちの病斑