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営農情報(2019年度)

今ハウス内はナミハダニだらけかも?春先の防除を徹底しましょう!

広報誌「さいたま」2020年3月 No.240号より

 ナミハダニは、体長0.5mmと小さいですが、植物の葉に寄生して枯らしてしまう害虫です。特にハウスに侵入したナミハダニは、1月頃から気温が高くなるにつれて徐々に増え、3月にはかなりの数になります。そのため被害が深刻化するおそれがあり、注意が必要です。

1. ナミハダニの発生を確かめる

 ナミハダニが発生すると、次の様な症状が見られます。

  1. 葉に白~黄色の斑点が生じる。
  2. 葉や茎にクモの巣状の糸が張る。
  3. (1)や(2)のような症状がハウスの入口から開放部から広がっている(人の衣服に付着したり、風に乗って運ばれてくるため)。

 効果的な防除には、早期発見が重要です。かん水時などに葉の様子を確認し、上記の症状が見られないか確認しましょう。

2. もしナミハダニがいたら・・・
防除のポイント
  1. 農薬散布時は葉裏にかかるように工夫しましょう。
    ナミハダニは主に葉裏に寄生します。農薬をしっかり効かせるためにも、ノズルを上向きにして、葉裏にも散布しましょう。
  2. 同一系統のダニ剤は連続使用を避けましょう。
    ナミハダニの世代交代期間は10日といわれており、薬剤抵抗性がつきやすい害虫です。IRACコードなどを参考に、同じ成分や同じ作用をもつ農薬の連続使用は避け、抵抗性を発達させないようにしましょう。
  3. 天敵を上手く活用しましょう。
    農薬抵抗性を発達させない手段の一つとして、天敵資材の利用が考えられます。特にチリカブリダニはナミハダニを捕食する能力が高いので、症状が比較的軽い場合には有効と考えられます。ただし、クモの巣状の糸が葉全体を覆っている場合には、既に害虫密度が高い状態ですので、農薬での防除をおすすめします。
    農薬を使用する際はラベルをよく読んで、登録内容を確認してから、適正に使用してください。

ナミハダニに寄生されたイチゴ葉
ナミハダニ雌成虫
ナミハダニ雌成虫
(写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集)

さといも疫病について

広報誌「さいたま」2020年2月 No.239号より

昨年、さといも疫病が県内で発生しました。さといも疫病は、感染力が強いことが特徴で、宮崎県、鹿児島県、千葉県などで発生し、収量が半減するなど大問題となっています。そのため、早期に発見し、耕種的防除と薬剤による適期防除を組合せにより蔓延を防ぐ必要があります。

【さといも疫病の見分け方】
さといも疫病葉おもて
さといも疫病葉うら
(1)病斑の形状は円形を中心として広がる。
(2)病徴が進むと穴が開く場合がある。
(3)葉の表面だけでなく、裏面にも病斑ができる。
【防除対策】
  1. くず芋などを残さ捨て場などに廃棄する場合は、土に埋めて腐らせるなどして、芽が地上部に出てこないようにする。残さ捨て場の芽が出た芋や、ほ場脇などに生えている野良生え芋が重大な伝染源となるため、徹底して除去する。
    ※除草剤を散布するなどの方法がある。
  2. 発生ほ場からは次年度用の種芋として使わない
    未発生ほ場から種芋を採取する。
  3. 薬剤防除
     発病前 ジーファイン水和剤(RACコード F:NC、M01)
      使用基準:収穫前日まで/制限無、希釈倍数1000倍、散布液量150~500L/10a
     発病後 アミスター20フロアブル(RACコード F:11)
      使用基準:収穫14日前まで/3回、希釈倍数2000倍、散布液量100~300L/10a
    ※必ず展着剤を使用
      いも類に登録のある展着剤(例)スカッシュ、アプローチBI、ハイテンパワー
葉柄の黒いしみ状の病斑
葉柄の黒いしみ状の病斑
発生源となる野良生え芋
発生源となる野良生え芋

農作業機を直接装着した農耕トラクタの公道走行について

広報誌「さいたま」2020年2月 No.239号より

農作業機を直接装着した農耕トラクタの公道走行については、灯光器類の装着、車両幅の確認、安定性の確認などの項目があります。また、農作業機を装着することにより、大型特殊免許(農耕機用に限るも含む)が必要になる場合があります。

(詳細は農林水産省等のホームページを参考にしてください。)

農林水産省

一般社団法人日本農業機械工業会

果肉まで赤いウメ「露茜」を作ってみませんか

広報誌「さいたま」2020年1月 No.238号より

「露茜」は、現農研機構果樹茶業研究部門が育成した、ウメと近縁の赤肉のニホンスモモに、ウメを交雑して育成された種間雑種です。果皮・果肉が赤く、赤い梅酒・梅ジュース(糖抽出果汁)ができる品種です。一般的なウメと同様に生食には適さず、加工して利用します。

「露茜」の特徴

収穫期は、7月中旬で、果実は50~70gとウメとしては大きく、核(種)が小さいため、果肉割合が高いです。果皮はほぼ全面に赤く着色し、果肉も成熟に伴って赤色に着色し、梅酒や梅ジュース、梅ジャムに加工すると、きれいな赤色になります。

梅果実
果実
梅断面
断面
左:ジュース、右:梅酒
左:ジュース、右:梅酒
栽培方法
梅

 自家不和合性であり、「露茜」だけでは結実しないため、受粉樹の混植が必要です。開花期が遅いため、受粉樹には開花の遅いウメ品種もしくはアンズ品種が適しています。

 さらに結実を安定させるためには、ウメ、アンズの花粉を使用した人工受粉が有効です。

 樹勢が弱く、結果枝が下垂するため、1年枝の切り返しを行い新梢の発生と伸長を促す必要があります。また、短果枝の維持が難しいため、予備枝をとり、結果部位を確保することも重要です。

加工について

 一般的にウメを利用してジャムを作る場合には、酸が多いために砂糖を大量に加える必要があります。「露茜」は一般的なウメと比較して酸含量が少ないため、加える砂糖を少なくすることが出来ます。一方、酸の少なさは保存性の悪さにもつながるため、梅ジュースを作る時には、酸の多いウメと合わせて加工する、酢を加える、低温で貯蔵するなどのカビよけ対策が必要です。

 「露茜」を用いた梅干しは 、果肉が粗くざらつき、えぐみが残ることもあるなど、「南高」など一般的なウメのものと比べて品質が劣ります。

栽培管理マニュアル ウメ「露茜」の早期多収技術及び高品質果実供給技術も参考にしてください。

引用文献、引用写真:農研機構 果樹茶業研究部門 特集コーナー「露茜」

農作物を育てるための「土づくり」って何?

広報誌「さいたま」2019年12月 No.237号より

農作物を栽培するためには、「土づくり」が大切だとよく耳にしますが、何となくわかっていても、うまく説明できない人が多いのではないでしょうか。  「土づくり」とは、作物が必要とする養分や水分をバランス良く十分に供給できるような能力を高めて、土壌の作物生産能力を維持していくことです。具体的には次の3つの側面からみることができます。

1. 3つの側面
  1. 物理性
    土壌の物理性は、土の硬さやこなれ易さ(耕しやすさ)、水はけや水持ちの程度、土の重さ、空気の通り易さ等を言います。
  2. 化学性
    土壌の化学性はpH、∗ 塩類濃度、作物の生育に不可欠な養分(必須要素)の多少で、土壌分析により明らかになる土の性質です。
  3. 生物性
    土壌中には、多種多様な生物(細菌、カビ、センチュウ、ミミズなど)が生息していて、土壌の生物環境を担っています。
2. 土づくりの方法
  1. 物理性改善
    深耕や溝切りやたい肥などの有機物資材及びバーミュキュライト、パーライトなどの鉱物質系の改良資材を施用して排水、保水、通気性などを良くする必要があります。
  2. 化学性改善
    作物別に必須要素などの改善目標があり、作付する前に土壌分析を行い、その結果に基づいて施肥などによる改善が必要です。
  3. 生物性改善
    土壌生物の餌となる粗大有機物や良質な堆肥を施用することにより微生物の種類と数を多くし、一定の均衡状態を保ち、ある種の病害性微生物などの異常発生を防ぐことが大切です。

秋冬作野菜の生育障害対策

広報誌「さいたま」2019年9月 No.234号より

 野菜栽培では、直売向け・自家菜園向けとも品種の多様化や栽培技術の進歩により収穫時期が広まり、販売・利用期間が拡大されるようになりました。その一方で、これまであまり経験したことの少ない生育障害や病害虫にあって期待した収穫物が得られなかったとの話をよく聞くようになりました。そこで、秋冬作野菜で近年目立っている障害を中心にその軽減策をご紹介します。

1.ネギ・タマネギのトウ立ちと葉枯れ性病害

 根深ネギでは、前年の秋に播種して7月~8月に収穫する夏どり栽培では定植後にトウ立ち(抽台)してしまい目的とする時期に収穫できない事態となったり、タマネギでは6月の収穫時期を迎える間際にトウ立ちする株が多数発生してしまうことがあります。その原因の共通点は、播種後育苗期~生育初期が温暖で生育が進みすぎた株が低温に遭遇して花芽分化することです。ネギの場合では、葉鞘径(茎径)5~7mm以上の株が低温(3~15℃)に一定期間遭遇することで花芽が形成され、その後気温の上昇に伴ってトウ立ちが進むので、播種時期が早過ぎるとトウ立ちしやすくなります。

 このトウ立ちを軽減するには、各作型と品種にあった時期に播種することが基本となります。ネギでは慣行苗(地床育苗)か幼苗(チェーンポット育苗)など栽培方法に応じて播種適期と定植適期が異なります。表1を参考に適期に播種するようにお願いします。タマネギでは、貯蔵性のある中生種や中晩生種ほどトウ立ちしやすいので、品種ごとの播種時期を厳守してください。また、花芽分化は低窒素条件で誘導されることもあるため、育苗中及び定植後の低温期に窒素切れを起さないように追肥や緩効性肥料の施用などの肥培管理にも留意しましょう。なお、ネギ・タマネギともりん酸肥料は育苗期・本ぽとも初期生育や活着促進などで増肥効果が高いため、冬期を経過するタマネギでは元肥には配合肥料のほかに過りん酸石灰を単肥として施用することをお奨めします。

 ネギ・タマネギとも育苗期~生育初期にべと病、生育中期~後期には黒斑病や葉枯病などが発生しやすく、放置すると重症化して作柄に大きく影響します。その対策として、育苗期からダコニール1000やジマンダイセン水和剤などの殺菌剤を継続して予防散布することが大切です。

表1 ネギ・タマネギの播種適期と適品種

作目

区分

播種適期

育苗日数

主な適品種

夏どりネギ

慣行苗

10月上旬~11月中旬

150日

夏扇4号 、夏扇パワー 、ホワイトスター、龍まさり、夏一心、越谷黒一本太

チェーンポット苗

12月上旬~1月上旬

70~80日

タマネギ
(地床育苗)

極早生種・早生種

9月上旬~中旬

50~55日

ソニック、七宝早生7号、貴錦、濱の宝

中生種・中早生種

9月中旬~下旬

55~60日

アトン、ターボ、アドバンス、ヒーロー

中晩生種・晩生種

9月下旬

55~60日

ネオアース、七宝もみじ3号、スワロー、ケルたま

 注)播種期は品種ごとに推奨されている適期があるので、確認の上播種してください。

2.アブラナ科野菜の生育障害

 作付機会の多いハクサイ・ダイコンなどアブラナ科野菜では、肥培管理のミスや気象変動などの影響によって、品質低下に直結する生育障害が目立っています。


ダイコン赤心症(ホウ素欠乏)

 ホウ素欠乏による生理障害として、ダイコンでは根の内部が変色する赤心症、ハクサイやブロッコー等では葉柄や茎にかさぶた症状を生じて商品価値が低下します。これは、土壌中のホウ素不足だけでなく、高pHや暖秋などの高温・乾燥によって助長されて発生するものです。

 石灰欠乏症による生理障害も多く、ハクサイやキャベツでは葉の縁や結球内部が腐敗する「縁腐れ症」や「心腐れ症」、ブロッコリーやカリフラワーでは「花蕾腐敗症」が発生します。いずれの症状も、窒素施用量が多すぎたり、土壌の高温・乾燥、多雨・多湿によって根の活力が低下した結果、石灰吸収量が減少したことによるものです。

 いずれの生育障害の軽減策としては、土壌診断に基づいた適正な土壌改良と施肥を行うとともに、良質堆肥の施用が不可欠です。

JAさいたま 営農経済部営農課

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