広報誌「さいたま」2024年3月 No.288より
田植えの準備の時期を迎えました。高温障害や病害虫等の被害を軽減するためには、土づくりなど田植え準備の段階からの管理が重要となりますので、下表の管理ポイントを点検してみましょう。また、夏季高温条件での採種種子は休眠が深くなることがあるので、発芽の状況をこまめに確認しましょう。
広報誌「さいたま」2024年2月 No.287より
中国において火傷病(※)が発生していることが確認されたため、国は令和5年8月30日から中国産なし・りんご花粉等の輸入を停止しました。
火傷病に感染した花粉で授粉作業をすると病気が伝染する恐れがあります。火傷病が国内に侵入・まん延して農業に重大な被害を与えることを防ぐために、以下にご協力ください。
・お手持ちの中国産花粉を使用しない
・中国産花粉は、個人で処分しない ⇒県が回収・廃棄
(廃棄の過程で花粉が放出されるリスクがあるため)
※火傷病とは
火傷病(かしょうびょう)はErwinia amylovoraという細菌(火傷病菌)による植物の病気です。リンゴやナシなどの植物に広く感染し、枝や葉が日にあぶられたように枯れてしまう病気です。日本国内で発生していないため、侵入を強く警戒しています。
火傷病の典型的な症状
中国産花粉は県が回収し、責任をもって廃棄します。令和6年2月上旬~中旬頃、受領会(回収)を開催する予定です。
詳細については、さいたま農林振興センターのホームページで改めてご案内します。皆様のご協力をお願いいたします。
さいたま農林振興センターホームページ(令和6年2月1日以降更新予定)
https://www.pref.saitama.lg.jp/b0901/sai-nougyoushanominasamahe.html
お問い合わせ先
さいたま農林振興センター 管理部 地域支援担当 篠川、山口、西山 048-822-2492
広報誌「さいたま」2024年1月 No.286より
現在の大気中の炭酸ガス濃度は400ppm 程度です。しかしながら、一般的な植物はこれよりも高い炭酸ガス濃度でも効率よく光合成を行う能力を有しています。この潜在能力を活用して、トマトやキュウリなどの施設野菜では、温室内の炭酸ガス濃度を高める技術として、「炭酸ガス施用」が行われてきました。図1は、冬季晴天日の温室内の炭酸ガス濃度の推移を示したグラフです。夜間は、温室が密閉され、作物や土壌微生物の呼吸等によって外気より濃度が高くなっています。これに対して、日中は換気により炭酸ガスが外気から導入され、この量よりも作物の光合成によって吸収される量が上回るため、温室内の濃度は外気よりも低下する場合が多いです。
土壌に有機物が少ない圃場ほど、日中の温室内の炭酸ガス濃度は低下しやすいために土壌を使わない養液栽培では、特に増収が期待できます(千葉県トマト・キュウリにおける炭酸ガス施用の技術指導マニュアルから引用)。
図1 冬季晴天日の温室内の炭酸ガス濃度の推移
(千葉県トマト・キュウリにおける炭酸ガス施用の技術指導マニュアルから引用)
日中の炭酸ガスが不足しやすい時期は、外気温が低く施設が密閉される時間が長い12~3月です。これ以外の季節では、施用費用を上回る効果を得るのは難しいと思われます。
大気中の炭酸ガス濃度400ppm程度のゼロ濃度差施用を基本とします。
施用の開始時刻は、概ね日の出頃からにします。夜間の炭酸ガス濃度が高いときは、開始時刻をこれよりも遅らせ、終了時刻は午後2時くらいまでとします。
炭酸ガス発生器からのガスを施設内の植物体に施用する方法として、暖房機の送風機能を連動させて暖房ダクトで送る方法、循環扇で発生したガスを気流で拡散する方法等が実施されています。ダクト施用を行うと、炭酸ガス濃度を均一化しやすいです。
炭酸ガス発生器(左)の吹き出しをハウス加温機(右)の吸気口に向けて施用する
(千葉県トマト・キュウリにおける炭酸ガス施用の技術指導マニュアルから引用)
炭酸ガス施用により光合成が促進されることで、生育促進を図ることができると考えられていますが、生育促進する分、水や肥料などがさらに必要になると考えられます。特に土耕栽培においては、水や肥料などの不足が阻害要因となることが考えられます。
埼玉県農業技術研究センターで過去に行った試験結果では、相対湿度が70%程度で光合成速度が最大になりました。
以上の結果から、炭酸ガス施用の効果を発揮させるためには、炭酸ガス施用量に応じて水や肥料などを増加させることや湿度条件の維持が大切です。
広報誌「さいたま」2023年12月 No.285より
柿の結果習性は図1のとおり、充実した前年枝(結果母枝)の先端2~4芽に花芽が着生します。
通常、柿の花芽は葉芽に比べ幾分大きいですが、せん定時に外部から完全に花芽と葉芽を区別することは困難です。そのため、果実をならそうとする枝(結果母枝)は切り返さず、先端近くの花芽のあると思われる2~4芽を切り返して結実させず、予備枝として利用すると、翌年の結果母枝が確保されます(図2)。
図1 柿の結果習性
柿は、着果させると結果部位から先が極端に細くなり、花芽の着生は少なくなります。そのため、結果枝は翌年の結果母枝には不適切で、着果部位の下まで切り戻して予備枝にするか取り除きます。
図2 側枝のせん定法
(1)裏年のせん定(ほとんどの樹は今年の冬はこのせん定をします)
極端な裏年は誰がせん定しても結実しませんので、樹形改造をし、樹の中心まで日が当たるように主枝、亜主枝間隔を広くするため大枝の間引きせん定をします。また、枯れ枝や細い枝、芽が退化している枝を主体に切り、花芽の着いている枝は切らないようにします。
特に裏年のせん定は、切り返しせん定は絶対に行わず、間引きせん定を主体にします。
(2)表年のせん定
わずかに陰芽が発生するような強いせん定を心掛けましょう。樹形改造のため大枝を剪定しても花芽が確保できます。
特に表年には新梢の残枝数に対し30~40%の切り返しせん定をして予備枝を作っておくと、表年と裏年が解消されるようになります。しかし、せん定だけでの隔年結果防止は完全ではないので、人為的に着果制限もしなければなりません。
広報誌「さいたま」2023年11月 No.284より
農業経営の法人化には、①農業経営の高度化・効率化、②対外信用力の向上、③優れた人材の確保、④経営継承の円滑化(相続対策)、⑤税の軽減 など、多くのメリットが期待できます。「法人化」は経営を発展・継続させるための『手段』であり、特別なことではありません。先ずは法人化のメリット・デメリットを知ることから始めませんか?
さいたま農林振興センターでは、法人化メリット・手続きなどの説明のほか、経営改善に向け専門家による個別相談会を開催しています。個別相談会の費用は無料です。
主な専門家の項目 | 主な相談内容 | 費用 | 備考 |
---|---|---|---|
税理士 | 法人化のメリット、適否 など | 無料 |
・相談はご自宅又は当センターで行います。 ・時間は2時間/回です。 ・先に経営状況やご意向をお伺いします。 ・日程は個別に調整させていただきます。 |
社会保険労務士 | 雇用契約の留意点、労務管理制度(雇用ルール、社会保険) など | ||
行政書士・司法書士 | 法人化メリット、手続き など | ||
弁理士 | 商標登録 など | ||
中小企業診断士 | 経営の分析・計画、経営承継 など | ||
デザイナー | 販売促進資材、ホームページ、6次化商品デザイン など |
※相談内容等によっては、ご希望に添えない場合もありますのでご了承ください。
「6次産業化」とは、農業者が農産物の生産から加工、流通・販売まで主体的にかかわり、新たな付加価値を生み出そうとする取組のことです。
1次(農産物の生産)×2次(加工)×3次(流通・販売)=6次産業化
取組内容には次の2つがあります。
農産加工品を自分で作ってみたい方、委託加工を考えている方、6次産業化の取組に関心をお持ちの方は、さいたま農林振興センターまでご相談ください。
・新商品開発や新たな販売方式に取り組むための計画作成支援
・計画実現に向けた各種相談と実践支援
・経営や加工などの研修会、情報交換会の開催
・商品PR会の開催 等
お問合せ先:さいたま農林振興センター 新規就農・法人化担当 TEL048-822-1007
広報誌「さいたま」2023年10月 No.283より
今年も高温など様々な気象が続いています。基本技術を励行し、気候変動に強く、収量品質の良い小麦栽培を心がけましょう。
小麦はほ場のpH6.0~7.0を目安に石灰質資材で酸度を矯正しましょう。完熟たい肥の施用(1t/10a)や稲わらのすき込みで地力維持に努めましょう。
排水不良による湿害は、発芽不良など収量・品質低下の大きな要因です。弾丸暗きょで雨水の地下浸透を促すとともに、ほ場の外周やほ場内に5~10m間隔で明きょを掘り、ほ場表面の排水を良くしましょう。
種子は必ず更新し、種子消毒を行いましょう。は種適期は11月10日~25日です。早まきは過繁茂につながります。逆に遅すぎるとなまぐさ黒穂病やヤギシロトビムシの被害を招きます。は種量はドリルまきで6~8kg/10aを基準にし、天候不順等によりは種作業が遅れた場合は、は種量をやや多めにして苗立ち数を確保します。
「さとのそら」の生育は後まさり型なので追肥をしっかりと施します。基肥は窒素成分で8kg/10a(例:化成肥料14-14-14なら60kg/10a程度)、追肥は窒素成分で3~4kg/10aを基準にします。追肥時期は茎立ち前の3月上中旬が目安です。一発肥料を用いる場合、窒素成分で10~13kg/10aを基準にします。施肥量は土壌分析の結果を元に調整してください。
凍霜害防止や耐倒伏性向上等のため、本葉が3枚以上展開したら、年内に1回、茎立ちする前まで10日~2週間間隔で2回程度を目標に行いましょう。
ただし、土壌水分が高い状態で実施すると土壌が締まり湿害を助長するため、天候や土壌の水分状態に注意しましょう。過乾燥の場合は、過剰な麦踏みでかえって生育を抑制する危険性があるため注意しましょう。
除草剤は、は種後の土壌処理剤散布を基本に適期に散布します。は種後・散布前の土壌鎮圧は除草剤の効果を安定させます。ヤエムグラやカラスノエンドウなどの広葉雑草が発生している場合は茎葉処理剤を使用します。
なお、前作でカラスムギが多発したほ場では、可能な範囲では種を遅らせ、それまでに発芽したカラスムギを耕うんにより枯らします。場合によっては休耕し、耕うんや非選択性除草剤でカラスムギの密度を減らすなどの対策も検討しましょう。
広報誌「さいたま」2023年9月 No.282より
接ぎ木は果樹類を繁殖させる場合に広く用いられている方法です。一般的には、樹液の流動が始まった春のお彼岸頃から実施される「枝接ぎ」が行われていますが、8月下旬~9月にかけて行われる「芽接ぎ」が技術的にも容易で、初めての方でもかなりの活着率が得られるため、おすすめの方法です。
広報誌「さいたま」2023年8月 No.281より
近年、地球温暖化に伴うと考えられる気候変動により、降水量が100mmを超えるようなゲリラ豪雨が増加し、それに伴う冠水害の発生が増えています。そこで、冠水害を軽減させるための対策について紹介します。
①堆肥や緑肥作物等の有機物の投入不足
②ロータリ耕耘等による圧密層(耕盤・不透水層)の形成(トラクタ等の走行により地下30~50cmに圧密層ができる)
また、品目別の耐水特性について、表1に、野菜の品目ごとに浸水や冠水がどの程度の時間続くと発生するのかを日数で表しました。
トマト、キャベツ及びインゲンなどは、湛水、冠水日数1日で被害が発生し、ホウレンソウ、ナスなどは2~3日となっています。しかし、サトイモ、ヤマノイモなどは5日以上と耐水性が高く、湛水、冠水の影響を受けにくい品目となっています。
現地でのブロッコリー冠水被害のようす
表1 湛水・冠水害の品目別特性(H30広島県西部農業技術指導所資料より)
① 生育日数と被害率の関係
表2は、品目別に生育日数ごとの被害率を示しています。ダイコン、ハクサイ及びキャベツは、播種または定植10~15日後の生育初期の被害率が、25~35%で最も高くなっています。
表2 生育日数の違いと被害率の関係(H30広島県西部農業技術指導所資料より)
① 圧密層の心土破砕(プラソイラ・サブソイラ)、堆肥施用と部分深耕(オーガー)を利用します。
② 高畝栽培、畝の高さを10cm以上にします。
③ 畝のマルチ栽培や全面マルチ栽培を行うことにより、根が表層に多くなり冠水害を回避するこができます。
④ 冠水害の発生の恐れがあるほ場では、定植前に持続力の高い酸素供給剤を施用するか冠水した箇所や降雨のあとで泥はねがある箇所へ酸素供給剤を施用します。
さらに湿害発生の危険度に応じて、①生育初期の冠水害の回避②耐湿性品種の導入(品種の変遷が激しいのでメーカーのカタログ等を確認する)③高畝+マルチ栽培の導入④明渠排水の施工などほ場排水性の改善を組み合わせることが重要と考えられます。
広報誌「さいたま」2023年7月 No.280より
埼玉県さいたま農林振興センター農業支援部(電話048-822-1007)から、来年度農業大学校の学生募集についてお知らせいたします。
埼玉県農業大学校は、農業及び農業関連産業の担い手養成を目的に、農業の生産から販売まで一貫して基礎から学ぶことができる実習を主体とする専修学校です。
将来の農業の担い手を目指す仲間たちとともに、農業の基礎知識と基本的な栽培技術を身につけて、農業分野での活躍に向けた一歩を踏み出しませんか。
課程 | 学科名 | 定員 | |
---|---|---|---|
2年課程 | 野菜 | 30名 | 90名 |
水田複合 | 5名 | ||
花植木 | 15名 | ||
酪農 | 5名 | ||
1年課程 | 短期農業 | 35名 |
入試区分 | 出願期間 | 試験日 | |
---|---|---|---|
推薦入試 | 令和5.10.1(日)~10.10(火) | 令和5.10.26(木) | |
一般入試 | 2年課程 | 令和5.11.1(水)~11.10(金) | 令和5.11.28(火) |
1年課程 | 令和6.1.4(木)~1.10(水) | 令和6.1.25(木) |
※ 一般入試(2年課程)で定員が満たされない専攻については、追加募集を行う場合があります(一般入試(1年課程)の試験と同日に実施します)
※ 高等学校を既卒の方が農林振興センター所長からの推薦を希望する場合は、令和5年9月11日(月)までとなっていますが、早めに農林振興センターまでご相談ください。
平成31年度短期農業学科短期野菜専攻卒業
自宅は農家でしたが、大学では別分野を学んでいました。就職活動中に自分のやりたいことを見つめた結果、農業で成功したい気持ちが大きくなり、埼玉県農業大学校へ進学しました。
学生時代から家の農作業を手伝っていましたが、基本作業(種まきや水やりの仕方等)を基礎から学んだことが、今の栽培に活かされています。
短期農業学科は様々な年代の同じ志を持つ方と一緒に学ぶことができ、刺激のある楽しい学校生活を送ることができました。
我が家は3世代で農業をしていますが、それぞれが異なる品目を担当しています。私は主にイチゴを担当し、夏はトウモロコシ、エダマメ、ナスなどの野菜を作付けています。自宅直売所やJA直売所、一部のスーパー等で販売していますので、よろしければご賞味ください。
広報誌「さいたま」2023年6月 No.279より
4月中旬の気温は、高く推移し、苗が伸びやすい環境でした。
気象庁発表(4月27日)の3か月予報によると、5月は晴れの日が多く、6月は平年と同様に曇りや雨の日が多いが気温は高く、7月の期間前半は曇りや雨の日が多く後半は晴れの日が多い、気温は平年並みかそれ以上で推移する見込みです。
今後、高温に対応した水管理で品質を確保し、適正施肥で食味の向上を目指しましょう。
中干しは、倒伏防止・健全な根の育成・無駄な分げつの抑制・地耐力の向上等の効果がある重要な作業となります。
開始時期:1株当たりの茎数がコシヒカリ20本、彩のきずな25本程度になったら実施
実施期間:7〜10日
実施程度:土が湿って足跡が残る程度
穂肥時の理想的な稲姿は、葉色が3.0~4.0で葉が立ち、朝露がのってもなびかないような稲です。穂肥時期は幼穂長で判断してください。
品種 | 穂肥時期 | 幼穂の長さ | 葉色(葉色カラースケール) |
---|---|---|---|
コシヒカリ | 出穂18日前 | 10~15mm | 3.5~4.0 |
彩のきずな 彩のかがやき |
出穂25日前 | 1~2mm | 4.0~4.5 |
施肥時期
・早すぎる 節間が伸びすぎることで倒伏しやすくなる
・遅すぎる 食味が低下する傾向(玄米のたんぱく含有率があがるため)
①コシヒカリ:出穂18日前、彩のきずな:出穂25日前の生育が平均的な株の主茎を株元から取る
②展開している葉から数えて3枚目の葉鞘を茎の付け根から取る
③葉鞘部分を十分につぶしてから柔らかくし、ヨードカリ液(うがい薬でも可)を浸す
「染色率(%)=染色部の長さ÷葉鞘全体×100」
品種 | 葉色 | 染色率 | 窒素施肥量 |
---|---|---|---|
コシヒカリ | 4.0以下 | 50%以上 | 1.2~2kg/10a |
彩のきずな 彩のかがやき |
4.0~4.5 | 50%以上 | 2~3kg/10a |
広報誌「さいたま」2023年5月 No.278より
近年、温暖化の気象の影響を受けこれまで大きな被害が無かった病害虫が異常に発生したり、新しい種類の被害が顕在化しています。そこで、夏期を中心に問題化しやすい難防除病害虫対策について紹介します。
スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)は、移植直後の水稲苗を食害する貝で、JAさいたま管内では荒川沿いの水田に生息しています。近年の暖冬の影響により生息密度が高まり、被害水田が増加しています。
本貝は寒さに弱く、冬期の気温と水田内越冬死亡率の間に相関関係が認められます。その関係式に今冬のさいたま市のアメダス平均気温(12月~2月)を当てはめると、越冬死亡率は52%でした。同様に算出した昨年の越冬死亡率は61%でしたので、今年越冬後の本貝の生息密度は昨年よりやや多いと予想されます。
これからの対策として、田植え前までに取水口や排水口に網目10mm程度のネットや金網を設置し、本貝の水田への侵入を防止しましょう。また、田植え後2~3週間は4cm以下の浅水管理として貝の活動を抑制します。貝の密度が高く食害が予想される水田では田植え後にスクミノンやスクミンベイト3などの防除薬剤を施用しましょう。なお、深水となった部分で貝の活動が活発で被害が生じやすいため、水田内を均平に保ち、水深が深くなる場所を減らすことが重要です。
数年前から従来とは別の新系統(B系統)が出現し、幼虫がネギの葉を白い筋状に食害して、葉が白化・枯死するため劇症化し収量・品質の低下を招き、当JA管内でも大きな問題となっています。成虫は体長約2mmの微小なコバエに似た虫で、葉の組織内を白色斑点状に食害しながら産卵します。ふ化した幼虫は葉の内部に潜り込んで葉肉を食害します。幼虫はうじ虫状で体長4mm程に成長すると葉から脱出し、地表や土中で蛹となります。その後、蛹から羽化した成虫はネギの葉に産卵を繰り返しふ化幼虫が加害を続けます。
栽培期間の長いネギでの防除対策のポイントは、発生初期から生育ステージごとに薬剤防除を徹底することが重要です。効率的で効果的な防除として、定植時や土寄せ時には適宜ダントツ粒剤等の粒状殺虫剤を株元散布することをお薦めします。有効成分が土壌中に残効するため蛹の生息密度を下げることができ、茎葉部への浸透移行性もあるので葉肉中の幼虫を殺虫することができます。薬剤散布には、抵抗性を発達させないようにハチハチ乳剤やカスケード乳剤等の作用性の異なる適用殺虫剤を使用してください。また、被害葉や収穫残さは本虫の発生源となるので、調製後の残さ等はほ場や作業場付近に放置しないで、廃棄場所を決めて土中深くに埋没するなど適切に処分しましょう。
モモヒメヨコバイは、埼玉県では令和2年9月に初発生が確認された新しい害虫で、当JA管内では盆栽用のウメ苗木や枝物用のハナモモ等に被害が散見されています。被害の特徴は、成虫及び幼虫が葉を吸汁加害し、葉全体が吸汁されて多数の細かい吸汁痕ができるため被害葉は白化します。激発すると早期落葉することがあります。
発生生態には不明な点が多いですが、国内ではウメのほかモモ、スモモ、アンズ、オウトウ等のバラ科果樹を加害することが判明しており、今後の発生拡大に注意が必要です。防除対策には、春期から発生に注意し、7月~8月にはアブラムシ類などと同時に防除できるアグロスリン水和剤等の防除薬剤を葉裏まで丁寧に散布してください。
広報誌「さいたま」2023年4月 No.277より
緑肥作物は、これまで有機物補給を主目的とし連作に伴うセンチュウ等の土壌病害虫の被害軽減なども目的に作付利用されてきました。そのため、主作物の休閑期に輪作物として作付するため、栽培期間の長い作物では土地利用率が低下し、収益にも影響するなどの問題がありました。そこで、今回はその影響が少ない春から夏に作物のうね間に作付(間作)する「リビングマルチ」、畑の周囲に作付する「障壁作物」の2タイプの緑肥作物について種類や利用法を紹介します。これらの緑肥作物の利用は、環境保全に役立つ技術として全国的に導入・取組みが増加しています。お読みいただき、環境にやさしい野菜づくりにご活用ください
リビングマルチとは、栽培作物の播種前にすき込んで利用するのではなく、栽培中に生育を維持しながら地表面を覆って利用する緑肥作物の種類をさします。野菜や畑作物では一般的に間作として、果樹園では下草として利用するものです。リビングマルチを利用する目的には、有機物補給、土壌保全(流亡や緻密化の防止)、地温上昇抑制、天敵温存などがありますが、最も期待される効果は雑草抑制です。そのため、リビングマルチの作付効果を得るためには、雑草の発芽・成長を抑えながら栽培作物の生育は抑制しないという特性を持った種類・品種を利用することが大切です。温暖期に栽培する春夏野菜でリビングマルチに向く緑肥作物には、昨年9月号で紹介したヘアリーベッチは伸長する茎葉が栽培作物を覆ってしまいやすいので不向きで、野菜の生育にあわせて早く生育するオオムギなどの麦類が適しています。麦類は、春から初夏に播種すると低温期を経過しないために出穂せずに茎葉が旺盛に成長し、地表面を覆って雑草の発生を抑制します。また、夏の気温の上昇に伴って茎葉が枯れ上がって地表面を覆って、敷きわらの役割を発揮し、土壌の乾燥防止や地温の上昇抑制等の近年温暖化傾向の気象変動に対する軽減効果を得ることができます。表1に、リビングマルチに適した麦類の緑肥作物の品種を紹介したので、各品種の特性を理解して導入してください。
利用場面には、根深ネギの秋冬どり栽培のうね間への作付、ナス、オクラ、カボチャ、サトイモ等の夏野菜のうね間への作付などがあります。この中で、埼玉県北部でも導入が進んでいる根深ネギへの利用について概要を紹介します。根深ネギのリビングマルチに利用されている大麦は、品種は「マルチムギワイド」や「らくらくムギ」等で播種から枯上がるまでの期間が比較的短いものを使用します。播種はネギを定植する5月~6月に行い、定植後または1~2回目の土寄せ後頃に、手押しの播種機(ごんべい、クリーンシーダー等)を使用してうね間に条播します。ネギの生育が停滞する7月~8月の間にリビングマルチの大麦はうね間を被覆するまで生育し、管理機で土寄せ作業を開始する8月下旬以降には大麦の茎葉は枯死するため土寄せ作業の障害になることはありません。この利用法では、①地温上昇抑制効果(2~4℃低下)、②湿害軽減効果(透水性改善)、③天敵温存効果(すみかになってネギアザミウマ等害虫被害を軽減)なども確認され、ネギの収量・品質が高まっています。
長期栽培するナス等では、生育が早く長期間茎葉が生育する品種を使用し、播種は定植と同時にうね間に行うのがポイントで、栽培中の乾燥防止や土跳ねによる疫病など病害軽減効果も期待されます。
なお、リビングマルチに使用する麦類の種子は、緑肥作物用品種が適していますが、麦作している方は調製の際に出る「くず麦」の種子も使用場面によっては利用できるので活用すると良いでしょう。
リビングマルチを利用したネギ栽培
台風シーズンを経過するナスやオクラ等の夏野菜では、強風によるすれ果や倒伏等の障害を受ける機会が多くなります。畑の周囲には防風対策としてソルガムなど草丈の高くなる緑肥作物を利用して障壁状に作付しましょう。防風抑制効果を早く高めるためには緑肥作物は定植と同時に播種することが大切で、作付することで天敵温存によって農薬散布回数の低減や農薬飛散防止など環境負荷低減に役立ちます。